人のいない大自然を、自分と向き合いながら、ひたすら歩き続ける__
そんなロングトレイルを想像していた。
でも実際のテアラロアは、そのイメージだけでは語りきれない道だった。
テアラロア(Te Araroa) とは?

テアラロアは、ニュージーランドの最北端から最南端までをつなぐ
全長およそ3,000kmに及ぶロングトレイル。マオリ語で「長い道のり」を意味する。
北島の町々、ビーチや森から始まり、南島では山脈へと続いていく。
海岸線、森林、山岳地帯、牧草地など多様な自然環境を縫うように歩いていくルート。

衣食住をバックパックに全て詰め込み、南に向かって歩いていく。
朝起きて身支度を済ませテントを撤収し歩き始める。
日が暮れる頃にテントを設置して寝る。
生きることの “複雑さ“ から解放された、とてつもなくシンプルな時間。

食料は町に降りたときに補給する。
多い時は8日分の食料を買って担がないといけない。
水は雨水タンク、川、湖、池、などの水を浄水して飲む。
毎日平均で25kmほど歩くので、荷物の軽量化をしないと肩が終わる。
泥だらけの先にあったもの
テアラロアといえば泥。
と歩く前から噂で聞いていた。
期待通りと言えばそうなんだけど、あまりにもずっと続くもので一生分の泥を味わった気がする。
毎朝、泥だらけでずぶ濡れの靴下と靴を履くのにちょっとずつHPを削られていった。
たまによく分かんない油が浮いていたり、牛や羊のうんこが混じっていた。
バレンタインデーに泥をプレゼントしたら嫌な顔された。

初めてのロングトレイルで、何もかも新鮮だった。
満点の星空の下、山の上でテントも張らずに寝た夜もあった。
Lake Hawea 近くの山の頂上付近で、西の山々に沈む夕陽を見ながら、晩御飯を食べた時間が忘れられない。
風に吹かれないように岩の後ろに寝たが、夜中に風向きが変わってすごく寒かったけど。

歩いている時は基本的にお風呂に入れない。
長い時は7日間くらいお風呂に入れないので、全身から獣臭とほのかな酸味を足したような独特な香りがしてくる。
なので川や湖を見つけるたびに、体を清めていた。
山奥の大自然ですっぽんぽんで入る川は格別で、なにか新しい扉を開いてしまった気がする。

序盤は、自分たちがどれくらい食べるのか、全く分からなかった。
買いすぎたり、足りなかったり。
食料をピッタリ持っていくことは難しいが、失敗すると無駄に重荷を運ぶことになったり、逆に数日腹ペコだったりと大変だった。

あまりにも平坦な道が続くと調子に乗ってしまう。
歩くペースが掴めず、「あれ、行けるかも」と50kmチャレンジをしたら、足の裏が水ぶくれだらけになったことも。
結局この後ゼロデイをとることに。

そんな僕らをいつも支えてくれる人たちがいた。
同じ時期にスタートしたハイカーは毎日抜きつ抜かれつ、頼もしい仲間になっていた。
体力的にも精神的にもきついセクションがあった時には、ラーメンボムを貪りながら笑い飛ばす。
最高のセクションの後にはお互い興奮しながら感想をぶつけ合ったり。
変なところで寝てたり、面白いギアをいっぱい持っていたり、変なもの食べていたり。
最高な奴らばっかだった。

現地の人たちは宿や食事を提供してくれる人もいた。
通り過ぎた車が急に止まって ”jump on!”っていってきてくれる人もいれば
テアラロアハイカーを知っていてたくさんのお菓子をくれる人など
他にも語り尽くせないほど、たくさんの優しさをもらった。

全てが手探り、発見だらけで
決して2人だけの旅ではなくて、たくさんの優しさと共に
ただただ暮らすように歩く日々だった。
想像していたロングトレイルとの違い
歩く前に想像していたロングトレイルは、近くに町も人工物もないような広大な自然、いわゆるウィルダネスの中を何日もかけて、ただゴールに向かって進んでいくようなものだった。

実際、南島にはそういうセクションもいくつもあった。
けれど同時に、そうではない区間も確かにあった。
街の中や住宅街を歩いたり、80km以上出す車がすぐ脇を通るような道路を何キロも歩いたり、高速道路のゴミがたくさん放棄された雑木林を歩いたりもした。
北島は特にそういう場面が多い気がした。

期待していた景色とは少し違っていた。
でもそれは嫌じゃなかった。
むしろ、町を越え、山を越え、人々の生活のすぐそばを通り、国を縦断しているという感覚が強くなっていった。

歩き終わった多くの人が南島が良かったと言う。
セクションハイクで南島だけ歩く人もいるくらいだ。
もちろん歩く目的によってそれは変わるだろうが、僕は北島の方が好きだった。
もちろん大自然で開放的な南島も大好きだ。
けれどそれ以上に、新しい町や人との出会い、新たな発見に触れた時のワクワク感が好きだった。

このトレイルは本当に面白い。
北島のように舗装路を多く歩き、文化圏を越えて歩く一面もあれば、南島のようなウィルダネスの中を歩く一面もある。
たくさんの人に出逢い、たくさんの発見をする。
歩きながら、たくさんの暮らしの中から、 “生きることへのヒント” を見つける。
想像していたロングトレイルとは違っていたけど、むしろ自分にとっての新しい発見になった。
歩き終えて振り返ると、その違いすら含めてテアラロアだと思った。
めっちゃ楽しかったまた行きたいニュージーランド!

足焼けすぎ。
コメント